すずまろ物語

⑦検査

ロッククライミング

 

 活力を付け、ミルクを自分から欲するようになったすずは、どんどんパワフルになっていきました。鳴き声にも力強い張りがあり、身体的にも文字通り「パワー」が付いていきました。

 前述したように、出勤前に多めにミルクを与え、帰宅するまでミルクを与えられない生活が続いていました。ボク達が帰宅したことに気付き、ミルクを欲して鳴くすずの声はコチラが焦らされる程に日に日に強くなっていきました。そして、ある日からすずはミルクを待ちきれなくなり、先住猫と交わらないようにとケージに巻きつけたバスタオルをよじ登るようになりました。

 バスタオルを登りきって顔を出したすずは「ミルクをくれ!」と鳴きまくり、脚の力が尽きて落ちる、でもまたよじ登る、を繰り返していました。数週間前までほとんど動くことができず、歩こうものならフラついて転げていたので、ボク達にとっては信じられない光景でした。早くミルクをあげないといけないのに思わず見入ってしまうほどに。

このすずのロッククライミングは毎日何度も繰り返されました。巻きつけていたバスタオルはボクの好きなロックバンドのものでしたが、すずの爪で糸がホツれ、使い物にならなくなってしまいました。しかし、そんなことはどうでも良いと思える程にすずのロッククライミングを見ているのが嬉しく、幸せに思いました。

ようやく元気な子猫へ

 ここまでの回復に本当に時間がかかりましたが、約3週間かけてようやく元気な子猫にすずは成長しました。ボク達の目が届く時だけは、ケージから出してやり、部屋を歩かせて運動をさせてあげました。あおとこはるはその様子を遠くから警戒するように見ていました。身体は掌サイズで最も小さかったすずですが、中身は大物で我が物顔で部屋を歩いていました。

 台所に立ってミルクを用意しているとすずはそれに気付き、ボクの足にしがみついて力いっぱい鳴きました。「わかったわかった」と言いながら、人肌に温めたミルクを哺乳瓶ですずに与えました。哺乳瓶からミルクを飲むのも段々と上手になっていきました。チュパチュパとミルクを飲む時に、すずの耳が一定のリズムでピクピクと動く様子がたまらなく可愛かったことを覚えています。

 ミルクをいっぱい飲んだすずは、ケージに戻り、ポンポンに膨らんだお腹を上にして、マットの上でコロコロと転がりながら消化していました。その表情は何処と無く満足げでした。

検査

 

 活動的になっていったすずは、バスタオルを巻きつけていなければ、身体を上手くクネらせて、ケージの格子の間を抜けて脱走するようになりました。ずっと狭いケージにいるのも退屈なのでしょう。猫は警戒心の強い動物ですが、好奇心も強く、子猫であれば全てが新しいので尚のことです。

 ケージから出して生活させるためには、感染症を持つリスクがあるので検査が必要です。ボク達はすずの様子を見て、体重も増えたし、体力も付いてきているのでそろそろ検査を受けても大丈夫だろうと判断し、動物病院へ連れて行くことにしました。

 まだたった1ヶ月の猫生で、3回目の動物病院へ。この時から、妻の友人が勤める動物病院にお世話になるようになりました。すずを保護した日から親身になって相談に乗ってくれていた友人で、検査の日には「写真では見ていたけど、元気になったね!初めて会えたね!」と喜んでくれました。友人を含め、獣医さんやその他のスタッフさん達に「可愛い!可愛い!」とすずは文字通り猫可愛がりされており、何故かボク達が照れていました。

 

 心音や触診で特に異常は無く、最後に検査のために採血し「よく頑張ったね」と声をかけてすずをケージへ戻しました。獣医さんが血液を持って診察室を出ていき、ボク達は結果を待ちました。検査結果で猫エイズや猫白血病が陽性であれば、我が家の先住猫とは共に生活ができなくなってしまうため、非常に緊張する時間でした。

 数分後、「すずちゃん陰性です!」と獣医さんが笑顔で診察室に入って来て下さいました。ボク達は胸をなでおろし、ケージの中にいるすずに「良かったね〜!」と声をかけました。何やら人間のテンションが上がっているようだとケージの中のすずは不思議そうにコチラを見ていました。

 感染症が無いことがわかり、過去2回の動物病院の帰りの車中とは打って変わり、ボク達はあおとこはるが待つ家へと笑顔で帰ったのでした。

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