すずまろ物語

④セカンドオピニオン

体重が増えない

 カラスに襲われている子猫を保護し、急遽診て頂いた病院で酷い容態であることを知らされ、それでも助けるためにできることをやろうと決断した2020年5月1日。気持ち(感情)のアップダウンが大きく、車移動や助けるための準備であくせく動き、気力も体力も擦り減らした壮絶な1日を終えて、それから約5日ほど経過した頃です。

 

 授乳は初日や2日目に比べると、1日8回のことなのでボク達の手際も良くなっていました。それでも、1回の授乳に小一時間は必要でしたが、子猫も体力を付けてきているのか、はたまた、顔の骨折の痛みが和らいだのか、すこしずつ飲んでくれるようになっていきました。

 しかし、体重が増えてないなぁという懸念がボク達にはありました。保護した日が250g程、その後、270g程度まで増えましたが、そこで止まってしまいました。

 

 排泄についても少し様子がおかしかったのです。生まれたばかりの子猫は自分で上手く排泄ができないため、母猫が肛門を舐めて刺激してやることで排泄をします。人間が舐める訳にはいかないので、ウェットティッシュで肛門をちょんちょんと刺激していました。オシッコは時折してくれましたが、ウンチがなかなか出ませんでした。1日1回はウンチが出ても良いはずなのに、2日連続で出ないこともあったため、排泄についてもオシッコの回数とウンチの回数をカレンダーにメモしていくこととしました。

 1週間過ぎ、ゴールデンウィークも終盤に差し掛かった頃、子猫の顔色は良くなってきていましたが、相変わらず体重は増えませんでした。おかしいと思ったので、セカンドオピニオンを受けることに決め、ボク達はよくお世話になっていた信頼のおける獣医さんに診てもらうことにしたのでした。子猫が少しずつ元気になってきているだけに、このセカンドオピニオンで再び落ち込むことになろうとは思いもよりませんでした。

セカンドオピニオン

 子猫を移動用のケージに入れ、新居へ引っ越しをする前にお世話になっていた動物病院へ車で40分程かけて行きました。その獣医さんには、引っ越しをする直前に先住猫の予防接種を受診し、「今までありがとうございました。これからは引っ越し先の近くにある獣医さんにお世話になります。」と挨拶をしたばかりでした。再びお伺いした時は何だか小恥ずかしい雰囲気になりました。

 ケージから子猫を出し、保護した経緯、1週間の授乳及び排泄状況、そして体重が増えないことを獣医さんに伝えました。獣医さんはわかりましたと言い、触診を始めました。骨折していた顔を入念に確認されていました。「ごめんね〜」と言いながら、子猫の口に人差し指を入れて口内を探り、口内を覗いた後、獣医さんが「あー・・・」と低いトーンで発しました。ボク達はこの時少し嫌な予感がしました。

 触診が終わり、心音を聞いた後、獣医さんは「結論から言うと、この子は大きくなれないかもしれません。」と最初に話されました。「え、なんで?」と時が止まってしまうボク達を見て、先生は説明を始めました。

 “口蓋裂”という症状をご存知でしょうか。人間にも怒りうる外表奇形(目に見える部位の奇形)なのですが、何らかの原因で口蓋(口の裏・上の歯の奥側)が繋がっていない状態を言います。その奇形があると、口から入れた食べ物が口蓋の隙間から出ていってしまう摂食障害を起こします。また鼻腔に食べ物が行ってしまい炎症を起こすなど、様々な二次被害を受ける可能性もある厄介な症状です。

 しかし、保護した子猫は口蓋“裂”ではなく、口蓋“孔”と診断されました。口蓋が繋がっていない形成不全ではなく、「穴が空いてしまっている」というものでした。

 生まれつきそうだったのか、カラスに顔を突かれて骨折したことでできた穴なのか、原因はわかりませんが、体が小さすぎるのでその穴を塞ぐ術は無いということでした。当然、口からミルクを与えてもその穴から逃げてしまうので成長が鈍化、しいては大きくなれないかもしれない、更に栄養失調を起こしてしまうかもしれないという厳しい診断結果を受けて帰ることとなったのでした。

帰り道

 帰り道、信頼をおける獣医さんからの言葉だったからこそ、ボク達には重たい診断結果で、車中もどんよりムードでした。妻は助手席で保護した日と同じように泣いていました。生まれてきて間もないのに、どれだけ辛い苦しい思いをしないといけないのか、可哀想で可哀想でたまりませんでした。

 帰路、泣いている妻と話をしました。口蓋に穴が空いていても、ボク達ができることはこの1週間続けてきたことの他ありません。命を諦めるわけにはいかないからです。小さいながらに彼女は生きているからです。

 穴からミルクが逃げ、それが原因で炎症を起こしてしまうかもしれないという恐怖はありました。しかし、穴から逃げるのであれば、逃げても十分に栄養が補給できるように1回の授乳の量を増やすことに決めました。子猫にとっては苦しい荒療治だと心が痛みましたが、生きるために頑張ってくれと少し無理をさせることにしました。

 今思い返してみても、セカンドオピニオンから帰ってきてからの妻は心が強かったと思います。帰り道に流した涙を最後に、泣くことはありませんでした。そして、ボクよりもこの荒療治を子猫に声をかけながら一生懸命に実施していました。そして、この荒療治は功を奏すこととなったのです。

 

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