すずまろ物語

⑥活力

お引越し

 「独りっきりは可哀想ッ!」妻は言いました。

 小さすぎて検査を受けられないすずは感染症を移すリスクを考えて、先住猫と交わらないように小部屋に隔離されておりました。授乳の時間や様子見の際にボク達が顔を出すだけで、それ以外は独りで生活を送っていました。ケージの中だけでは狭いので、ケージの扉は開けて小部屋の中の安全な場所は行動できるようにしていました。

 それでも独りは寂しいし、日当たりの良い部屋でも無いため、元気になるものも元気にならないと妻は言いました。体力は付いてきてるかもしれませんが、表情に「活力」があまり感じられないのは事実としてありました。

 この妻の発信きっかけですずをケージ毎お引越させることにしたのです。小部屋から先住猫も生活するリビングルームへ引っ越しました。日当たりの良い所にケージを設置し、バスタオルを格子部分に巻き付けることで、先住猫とは交わらないように工夫しました。

 こうしてすずは新しい環境での生活をスタートさせ、見る見るうちに「活力」が芽生え始めることとなるのでした。

 

活力

 引っ越しをしてから、家族団欒の時間は、ボク、妻、あお(ロシアンブルーの男の子)、こはる(アメリカンショートヘアの女の子)、そしてすずの5人で過ごせるようになりました。すずに対して「すーちゃん!起きてるか?」と声をかけてみたり、あおやこはるがすずを覗き、それをすずが不思議そうに見上げていたり、お引越しを機にすずの生活に大きな変化が訪れたのです。

 2,3日経った頃、目で見てわかる程にすずの表情は更に元気になっていきました。猫風邪は治りかけに近く、目がパッチリ開くようになりました。そして、骨折していた影響かもしれませんが、口元は何だか微笑んでいるように見える成長を遂げました。

 ボクは活力が芽生えたすずの表情を見た時に「可愛い女の子に育つかもしれない!」と思ったのと同時に、猫も人間と同じで、独りきりで寂しいと成長に影響するんだなと思い知り、「寂しかったんやね。。。」と申し訳無く感じました。このような“生き物に寄り添う気持ち”に関して、ボク自身、猫との生活を始める前に比べると大きく変化しましたが、妻の感性には全く敵わないなあと思います。

 引っ越しして良かったなあと感じる数日間でしたが、なんとすずの回復はこの程度では留まらないのでした。

にゃぁーッ!!!(お腹空いたよーッ!!!)

 すずの体重は増えてきており、以前に増して活動もするようになっていました。その成長を鑑み、ミルクの頻度は徐々に減らしていました。しかし、相変わらず授乳の際は、口を開いてあげて注射器で注入する必要がありました。

  

 そんな中、緊急事態宣言が解除され、ボクも在宅ワークだけでなく、会社に行かないといけない日が増えてきました。ボクも妻も仕事の日は、すずに自分でミルクを飲んでもらう必要がありました。以前、どうしても二人で外出しなければなかった日は、大学生の妹に時給1,000円でヘルプを求め、すずの世話をお願いしたことがありました。しかし、本格的に仕事が始まったからと言って、毎日妹に来てもらうわけにはいきません。仕方なく、早起きしてしっかり目にミルクをあげ、日中はお皿にミルクとチュールを置いて仕事へ行きました。

 仕事から帰ってくるとまず、すずの様子を確認に行きました。すず自身は普段通り、キョトンとしていましたが、用意していたご飯は減っていませんでした。やはり自分では食べられないかと思い、すぐに授乳の準備をしました。このような生活を2,3日続けていると、またすずの様子に変化が現れました。

 仕事から帰ってきて、すずの様子を見に行くと、すずと目が合うや否や、「にゃぁー!にゃぁー!」と何度も力強く鳴くのです。「いつもと様子が違うぞ。。怒ってる?」と思いながら、授乳の準備をしました。

 授乳の準備が整い、ケージを開けると鳴き声をあげながら、ケージから飛び出し、授乳用の注射器に向かって一目散。早く飲ませろと言わんばかりに注射器の先を鳴きながら咥えようとするのです。初めてすず自身からミルクを求めてきたのです。ボク達は驚きましたが、喜びもあって「おー!お腹空いたんか!そかそか〜!」と言いながらすずを撫で、「もしかしたら哺乳瓶で飲めるかも!?」と思ったので、急いで哺乳瓶にミルクを移し替えて授乳をトライしてみました。

 すると、今までの苦労が嘘だったかのように、哺乳瓶からグビグビとミルクを飲んでくれました。飲み方は下手でしたが、それはそれで微笑ましいものでした。何より、初めてすずからミルクを求めるようになってくれたことが大きな前進で、生きようとしている彼女の意志が見えたような気がして非常に嬉しく、感動しました。

保護して3週間、やっと生死の境目を抜け出してくれ、元気に育っていってくれるイメージができるようになりました。

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