すずまろ物語

⑨Instagramデビュー

すずの里親さん

 すずを保護して間もない頃、妻との会話ですずの里親さんになってくれる方を探すかどうかの話がありました。しかし、カラスに怪我をさせられて満身創痍であったことと長生きできそうに無いという獣医さんの判断から、すずは引き取ってもらえる状態には無く、自分達で世話をしていくしかないという結論に至っていました。

 そんな会話があったことも忘れ、すずが予想に反して元気になっていったとある日、突然、妻から話がありました。

 

 「すずの里親さんになってくれる人が見つかったよ!」

 ある伝手から手を挙げて下さった方がいるとのことでした。その方についてのお話を妻が続け、聞くと里親さんになってもらうには申し分が無い、むしろボク達の家で生活するよりもすずにとって条件が良いと思いました。

 しかし、ボクは妻に対し「すずを里親さんに出したくない。。」と答えました。妻は「何で?すずにとってもその方が良いし、うちには先住猫が既に2匹いるから、この先3匹の面倒を見ていくのは大変だよ。」と困惑していました。

 困惑していたのはボクもそうでした。最初は猫を3匹も飼う気はボクにもありませんでした。2匹でも世話焼きは大変でしたし、経済的な問題もあります。妻の言っていることも十分に理解ができました。しかし、感情の部分ですずと離れるのが嫌だと思ってしまったのです。

 すずを保護した日から約1ヶ月、すずが元気になれるように大変な思いで最善を尽くす努力をしてきました。そして、すずはボク達の思いに見事に応えてくれました。その過程で、気付けばすずはボクにとってかけがえの無い存在となっていたのです。

 妻はボクの思いも理解できるし、自分も同じだと言いました。それでも、すずが里親さんに引き取られたからといって二度と会えなくなるわけではないので、皆にとって良い判断は引き取ってもらうことだと思うと話しました。

 すずを里親さんに引き取ってもらうかどうかの協議は、妻が冷静且つ論理的でボクは非常に感情的でした。両者譲らずの真っ向からぶつかり合いでした。

 最終的に、妻が「経済的にも大変なんよ!猫の生涯にかかる費用は約400万円もするんやで!」と発したことに対し、「そんなもん1年働いたら稼げるし、これからも働いて稼ぎ続けるから大丈夫や!」とボクが返答したことで妻が折れ、すずは引き続き我が家で面倒を見ることとなったのでした。

 振り返ってみても妻の言い分が最もで、ボクの考えは幼稚だったなあと思います。しかし、どうしてもすずと離れることが嫌だったのです。それほどにすずが可愛い存在になっていましたし、それは今も変わりません。

Instagramデビュー

 

 里親さんを探すかどうかの問答が終わり、すずが正式に我が家の一員になった時、ボクはすず用のInstagramアカウントを作りました。

 アカウントを作った時はすずに対して「すーちゃん全国デビューやで!」と冗談で話しかけていましたが、Instagramを始めようと思った理由はすずの成長過程の備忘録でした。1回目の投稿から元気になるまでの投稿には「#元気になります」とハッシュタグを付け、見に来て下さった方が心配されないようにしていました。

 Instagram開設から数日で多くの方がフォローして下さるようになりました。そして、「すずちゃん頑張ったね!」や「すずちゃんとても可愛いですね!」等、沢山の温かいメッセージを頂くようになりました。中には、カラスに襲われていた所を保護されたすずと全く同じ境遇の先輩猫もいらっしゃり驚きました。その先輩猫は立派に成長されていたので、「すずもいつか!」と大きな励みになりました。

 

 Instagramでは日本中の猫の飼い主さんと交流させてもらいました。その交流は楽しく、温かい言葉をかけてくださったり、アドバイスを頂いたり、すずの絵を描いて下さる方もいたり等、ボク達が一方的に感謝させて頂いている人に出会いました。すずがもたらしてくれた出会いは後々、ボクや妻にとって大きな心の財産となりました。

すずの離乳食デビュー

 相変わらず食欲旺盛でミルクを「溺れるよ!?」と心配になるほど口周りをビチャビチャにしながらガブガブと飲むすずでしたが、そろそろ離乳食を食べて更に成長してもらわなければならない頃合いでした。また、すず一人でもご飯を食べてもらえるようになるために離乳食デビューの必要がありました。

 初めての離乳食は取っ付き易いように「ミルク風味」のチキンペーストを選びました。早速食べてもらおうと指に一口サイズ取り「はいどうぞ、すーちゃん」と口に持っていきますが、全く口を開こうとしないすず。興味も示さず立ち去ろうとするので、「待て待て!」と捕まえて、再び指をすずの口の近くに持っていきました。しかし、すずは「にぃぁー!」と不機嫌そうに鳴き、ボクの指をまるで目の敵のように捕まえてガブりと噛みました。

 このくらいの時期から、瀕死の状態を助けられた事はすっかり忘れたようで、少し凶暴に、否、ヤンチャな性格にすずは成長しており、ボク達に牙を向くようになっていました。指等を掴んで噛まれることは日常茶飯事でしたが、すずはカラスに襲われた後遺症で上の歯が無くなってしまっていたため、噛まれてもコソばゆいだけで可愛いものでした。

 結局初めての離乳食は、すずの口を開けさせて離乳食の付いた指を口の中に塗り込む、そして噛まれるという格闘を数十分繰り返して終わりました。自ら、離乳食に興味を持ってくれることはありませんでした。最初は上手くいかないものです。

 VS すずの離乳食編では記憶に残っているお話があります。

 「子猫 離乳食 コツ」等とGoogle検索をすると多くの方が離乳食の与え方を紹介されています。その中で、You Tubeに投稿されていた方の手法を参考にしたことがありました。その方の子猫もすずと同じくらいの小さな可愛い子でした。猫の「綺麗好き」という性格を逆手に取った手法でした。

 前脚の拳の上に離乳食をペトっと少量置きます。すると、子猫は「前脚が汚れた!」と思い、ペロペロと舐めて結果的に離乳食を食べてしまうという手法でした。

 「コレだッ!」とボクは思いました。なぜなら、すずもトイレの後にはしっかりと砂をかける綺麗好きだからです。離乳食問題が解決するぞと意気揚々と準備をしました。

 すずを連れて来て「すーちゃん!ご飯食べよか!」と自信満々に話しかけ、右前脚の拳にチキンペーストを塗った次の瞬間。

 すずは前脚を舐めるどころか、脚を軽く上げて汚れを飛ばすようにブルンブルンと力強く振ったのです。空に舞うチキンペースト。ボクの顔面や服、部屋にペチャペチャと飛び散りました。そして、そのまま走り去るすず。フローリングにはチキンペース卜の猫の足跡。

 「もう最悪。。」と、この時ばかりはすずが野蛮で憎たらしく見え、You Tubeで見た子は何ておしとやかで可愛いかったろうと思いました。

 憎たらしいすずでしたが、どこか面白く、仕事から帰ってきた妻に顔にチキンペーストを付けられた話をすると大ウケでした。

 このように離乳食デビューは大いに苦戦しました。最終的にこちらから食べさせることは白旗宣言をし、自然に食べてくれることを待つことにしたのでした。

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