すずまろ物語

⑰すずとあお

経過観察

 トリコモナスと診断されて帰ってきたすずは、1週間後に再診に行くこととなっていました。1週間の内に様子が変だと思うことがあれば、すぐに病院へ連れて来て下さいと獣医さんからは言われていました。有り難いことに妻の友人には家での様子を定期的にLINEで報告し、獣医さんの耳にも入れてもらっていました。

 すずはというと、トリコモナスが原因で下痢をしており、動きはゆっくりスローペース。基本的には同じ場所でジッとしており、あまり動きませんでした。たまに動いたと思えば、水を飲みに行く程度。病院から帰ってきて、少しだけですが、ご飯を食べるようになったことがボク達の安心の拠り所でした。

 こはるもトリコモナスを抱えていますが、すずとは打って変わって、食欲は旺盛ですし、体も軽快に動かしていました。共通するのは下痢の症状のみ。すず位の頃のこはるもそうでした。どうしてこはるとすずで症状が異なるのだろうかと少し不安には思っていました。

 ノロノロとすずが立ち上がり、水を飲みにいった先には先客のこはるがいました。相変わらず、すずを良く思っていないこはるは、すずに何発が猫パンチを喰らわせ、シャァーと威嚇。すずは元気が無いのでヨタヨタと後ずさりし、やられるがままでした。さすがにこの様子は放っておけず、「こはる!すずしんどいからやめたりッ!」とこはるを一喝。

 こはるはピューっと立ち去り、すずは水をぴちゃぴちゃと弱々しく飲んでいました。こはるが悪いわけではないし、仕方の無いことです。しかし、猫も仲間が弱っているのでれば、人間のように心配したり、労ったりできれば良いのになあとこはるを見て思ったのでした。

すずとあお

 すずが体調を崩して数日後の朝でした。ボクは仕事へ行く日だったので午前5時半にベッドから這い出て、出社の準備のために下の階へ。リビングの電気をつけるとホットカーペットの上で身を寄せ合っているすずとあおが居ました。

 すずは表情からまだしんどそうな様子でした。あおはそんなすずを腕で引き寄せ、左の頬を何度も何度もペロペロとグルーミングしていました。すずはゴロゴロと喉を鳴らしており、喜んでいるようでした。なんだか「早く元気になれよ!パパとママが心配してるぞ!」とすずを元気付けようとしてくれているように見えて、ボクは朝から目頭が熱くなりました。

 「あお君優しいな。ありがとな。」と声をかけてボクは仕事へ向かいました。滅多と喉を鳴らすことが無いすずが体調を崩しているにもかかわらず喉を鳴らしていたため、本当に嬉しかったのだと思います。

 毎日投稿をしていたインスタグラムでもすずの体調について逐一報告していました。繋がっている人は皆、心優しい方ばかりで、心配や励ましの声を沢山、毎日届けてくれました。薬を嫌がるすずに、少しでも飲みやすくなるようにと、お勧めのペーストを紹介して下さったり、送ると言ってくださったりする方もおり、ボク達夫婦は「すずのお陰で素敵な人達と繋がることができたね。有り難いね。」と感謝の気持ちでいっぱいになっていました。

 すずとあおの動画を、すずの状況報告を添えて投稿すると、「すずちゃんが赤ちゃんの時に怪我(骨折)していた左頬を舐めてくれてるのかなぁ」とコメントして下さった方がいて、ボクは再び目頭が熱くなりました。

 すずはあおの側が安心するようでした。よたよたと弱々しい足取りであおの側へ行き、身を落ち着けている様子を何度も見ました。あおも嫌がることはなく、黙ってすずを側に置いてジッとしていました。すずはあおの側にいると喉を鳴らしていたのでした。

1週間後

 11月24日、すずの様子に変化は無し。相変わらず、足取りは重く、ご飯は食べず、投薬は噛みつきと威嚇でより困難さを極めていました。もはや、ボク達では薬を与えることができない状況でした。抵抗が凄まじく、妻と二人がかりでも薬を飲ませることができませんでした。

 当たり前ですが、すずに元気になって欲しい一心での投薬です。まるで敵を見るように威嚇するすずの目を見ることは非常に辛いものでした。小さなすずに対しての二人がかりの投薬は、何だかイジめているような気にもなりました。体調が良くなっている実感も全く無かったため、徐々にボク達夫婦は精神的に参っていきました。

 ご飯もあまり食べないため、すず自身もあばら骨が浮き出る程にやせ細り、毛割れも所々で起こしておりました。

 11月25日、ボクは仕事で妻は休み、すずを病院へ連れて行く日でした。

 家では上手く薬を飲ませられないため、入院することも選択肢に入れて獣医さんに相談してみることにしました。一般のボク達よりも獣医さんや看護師さんの方が投薬は手慣れているので、2,3日の入院で集中的にしっかりと薬を飲ませてもらい、回復させた方が良いのではと考えたのです。

 「すずをよろしくね。」と妻に伝え、会社へ向かいました。動物病院での診断内容やすずの様子はLINEで細かに報告してもらうことにしました。

 職場に到着する午前8時頃、妻から写真付きで1件のLINEが入りました。水を飲んでいるすずがお漏らしをしており、尿に黄疸が出てしまっているものでした。

 体調は回復どころか悪化していたのです。いよいよ「本当にすずは元気になるのだろうか。」怖い気持ちになりましたが、会社に着いたボクは業務を進めるしかなく、病院でのすずの診断結果の報告を待つしかありませんでした。

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