すずまろ物語

⑭すずとこはるの距離感

10月

 5月1日にすずを保護したので、10月はおそらく生後半年頃を迎える時期でした。あおが2歳、こはるが1歳、すずが6ヶ月で心配事もなく穏やかに生活を送っていた10月、ボクと妻は2年半の交際期間を経て晴れて入籍をしました。

 結婚式当日、親族に見守られながら神社で挙式を挙げ、食事会を行い、最後に役所で婚姻届を提出し、ヘトヘトになって三兄妹の待つ家へ帰りました。家ではお腹を空かせた三兄妹が寄ってきて、疲れたボク達にご飯の準備をするよう促してきました。

 結婚式後の後片付けをしていると、食事を終えた三兄妹が神社でもらってきた御札に群がっていました。好奇心で見たことない物のニオイを嗅いでいただけだと思いますが、祝福してくれているようにも見えました。

 10月は新しいことも始めました。庭に畑を作ったのです。庭と言えば、2020年の夏は抜いても抜いても生えてくる雑草との戦いの記憶、つまりは悪いイメージしかありませんでした。そのイメージを払拭すべく家庭菜園をしてみようと思ったのがきっかけでした。インドア派だったボクが畑を作ったので、話を聞いた母は大変驚いていました。

 「やろう!」と決めると行動は早いです。近所のホームセンターへ車を走らせ、土やタネ等を買い、家へ帰ってくると早速、庭の整地です。鍬で庭に元々有った土を柔らかくし、その上に購入してきた腐葉土を出して、畝を作っていきました。飼い主が鍬を振り回している様子を「何事!?」といった具合で三兄妹は家の中から眺めていました。

 ようやく畑が出来上がり、ボクはスナップえんどうのタネを蒔きました。冬を乗り越えて、春を迎える4月から5月、すずが1歳になる頃が収穫の予定でした。畑作りを最後まで見てくれていたすず、そしてあおとこはるのように「すくすくと育ってくれますように!」と願いを込めてタネを蒔いたのでした。

肌寒くなる季節へ

 10月の下旬、日中は大変過ごしやすい気候でしたが、朝晩は冷え込む季節になりました。風呂上がりから寝るまでの時間が寒かったため、少し早いですが炬燵を出すことにしました。すずにとって初めての炬燵体験です。

 あおとこはるは2度目の炬燵で温かいことを知っているので、すぐに入っていきました。しかし、警戒心の強いすずは、最初は炬燵を遠くから眺めていました。炬燵布団をめくってあげると、恐る恐る、ゆっくりと炬燵の中へ入っていきました。その後は、炬燵を知っている方なら全員が経験しているように、すずも炬燵の虜になっていったのでした。

 寒さ対策としてホットカーペットも出してあげることにしました。すずは初体験でしたが、マットや箱の上に乗るのは好きだったため、すぐにホットカーペットはお気に入りの場所になっていました。あおもホットカーペットが好きだったため、椅子取りゲームのようになっていました。

 「これからもっと寒くなっていくよ〜」と初めて冬を迎えようとしているすずに伝えましたが、キョトンとしていました。

すずとこはるの距離感

 相変わらず、すずのことを良く思っていない様子のこはるでした。しかし、こはるの思惑に反し、姉妹はそっくりに成長していきました。毛色が同じだったので、後ろ姿が本当に似ていました。すずは一定の距離感を保ちつつも、やはりこはるにも近付き続ける日々でした。

 天真爛漫、自由気ままに見えたすずでしたが、実はこはるに対して気遣いをしている様子もありました。例えば、あおが食べているご飯は横から頭を突っ込んで一緒に食べようとしますが、こはるが食べている邪魔は絶対にしませんでした。またキャットタワーにおいても、姉を立てる様子が伺えました。こはるより高い位置で寛いだり寝たりすることはありませんでした。

 猫の姉妹間における上下関係が垣間見える日々でしたが、ついにすずのヨイショ活動が実を結ぶ日がきます。朝、起きるとベッドのすぐ上にある出窓をいつも確認します。そこではほぼ毎朝、猫達が朝日を浴びながら気持ち良さそうに寝ています。ある朝、起きて出窓を確認すると、同じ猫ベッドの上でこはるとすずが一緒に寝ていたのです。近付こうものなら猫パンチを喰らされるすずでしたが、この日はスヤスヤと寝ており、こはるは「今日だけは許してやるか。」という表情をしていました。

 

 決して仲が良いとは言えない姉妹でしたが、独特な距離感で生活を続けていました。結局、こはるもすずのペースに呑まれ、我が家はすずを中心に廻っていたように思います。半年を過ぎ、すずの体も随分と大きくなり、肩に乗ってくれた時等は「よくぞここまで成長してくれたなあ」としみじみと幸せに感じました。しかし、11月に入り、こはるの体調に異変が起こります。この異変を皮切りに穏やかな生活が音を立てて崩れていくこととなります。

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