すずまろ物語

⑮すずの異変

こはるの異変

 10月から11月に移り変わる頃、ある異変に気付きました。三兄妹のお揃いのトイレ掃除をしていると、下痢が散見されるようになったのです。明らかに様子がおかしい、健康状態に問題がある子がいると妻と話しました。しかし、下痢を見た時点で大体の予想は付いていました。

 

 こはるを迎えて間もない頃です。生後半年のこはるはよく下痢をしていました。様子がおかしいと思ったボク達は動物病院へ連れて行きました。便検査をすると「トリコモナス」という寄生虫がいることがわかりました。トリコモナスは非常に除去し辛い寄生虫で、手を焼いている飼い主さんが多くいるという話でした。実際、こはるのトリコモナスとの闘いも長いものになりました。トリコモナス用の虫下し粉薬は非常に苦く、生後間もないこはるにとって大変可哀想な投薬生活でした。毎日の投薬と1週間に1回の通院(便検査)を続け、4ヶ月目にしてようやくトリコモナスが居なくなり、便も固まりだしたという経験があったのです。

 当時の状況と類似していたため、すずを診てもらった動物病院へこはるを連れて行きました。結果、嫌な予想は当たりました。再びこはるの便にトリコモナスが発見されたのでした。

 獣医さん曰く、トリコモナスは非常にしつこいため、投薬を続けていたとしても治らないケースがあるとのことでした。成長して自然に強い免疫力が付くまで完全に除去できないこともあるそうなのです。実際、通院されている猫が2歳になってようやくトリコモナスから開放されたという話も伺いました。こはるは当時まだ1歳10ヶ月だったので、免疫力でカバーできていないことも考えられるというものでした。

 再びこはるの投薬生活が始まることとなったのですが、同時にあお、そして特に免疫力の低い生後半年のすずにも、トリコモナスが移らないように同じ薬を与えることとなりました。こうして、三兄妹の投薬生活が始まったのです。

経過観察と投薬生活

 こはるを動物病院に連れて行った数日後、念の為、あおとすずも連れて行き便検査を行いました。結果、トリコモナスは発見されなかったため一安心しました。こはるから移らないようにすることが重要だと改めて認識し、毎日朝晩しっかりと投薬を続けて行きました。

 トリコモナスの影響は下痢の症状のみで、それ以外は三兄弟で忙しく走りまわっているいつもの日常でした。苦い粉薬を与えることには大変苦労しました。あまりにも苦いようで、チャオちゅーるに混ぜ込んだとしても一度に多く口に入ると、泡のような唾液を吹いて吐き出してしまうのです。あおとこはるは元々チャオちゅーるが大好きなので、少しずつでも自ら食べてくれましたが、すずだけはそうはいきませんでした。普段からすずはチャオちゅーるやオヤツには興味を示さない子でした。チャオちゅーるに粉薬を混ぜ込んだ物もニオイをクンクン嗅いで、プイッと違う方向を向いて走って行ってしまうのでした。

 すずへの投薬は強制的にするしかないと判断し、授乳用に使っていたシリンジを仕方なく引き出しから出してきました。ミルクを与えていた時と同じように口を開けさせて、少しずつ粉薬と混ぜ込んだチャオチュールを飲ませていきます。しかし、授乳していた頃とは違い、大きくなったすずの抵抗は当時の比ではありませんでした。引っ掻かれるわ噛まれるわで、もはや格闘となってしまった投薬。すずに対して凄く申し訳なかったのですが、「お薬飲まないと下痢になるよッ!」と声を荒げてしまうこともありました。

 今思えば、こはるにトリコモナスが再発した時点で、免疫力の低いすずは隔離させて生活すべきだったのかもしれません。しかし、トリコモナスを駆逐するまでには数ヶ月も時間がかかるので、そのような長い期間を狭い部屋に隔離するのは可哀想だし、嫌々でも薬は飲んでいたので当時は隔離する判断には至りませんでした。

すずの異変

 11月上旬、投薬をしていること以外はいつも通りの日常が繰り広げられていました。しかし、すずの性格が少しずつ穏やかになってきている傾向が見受けられました。

 以前は撫でようものなら、自分を撫でにくる手を両前足で掴みガブリと噛み付いてきていたすずでしたが、撫でても怒らないことが増えてきたのです。怒るどころか、目を瞑って気持ち良さそうにするので、「見てーッ!すずが撫でられて気持ちよさそうにしてる!早くッ!早く来て見てーッ!」と興奮気味に妻に呼ばれたことを覚えています。

 抱っこもさせてくれるようになりました。以前は抱っこしようものなら、身を仰け反らして暴れて逃げるすずでした。それが、5分くらいであれば大人しく抱っこされるようになったのです。

 妻が体を動かしてプレイするテレビゲームを座って見ていた時、すずがボクの方に寄って来たので、「頑張ってるママを一緒に見るか?」と声をかけて抱っこしたことがありました。すずはボクの腕の中で、忙しく動いている妻を不思議そうに見上げていました。リラックスしているように見えたので腕の中にいるすずがとても可愛く見えました。

 変わらぬ生活を送っていた我が家でしたが、突如、すずに異変が起きたのでした。11月14日の土曜日の夜のことです。すずはお気に入りのホットカーペットの上でジーっとしていました。頭や背中を撫でると、抵抗もせず目を瞑っていました。「すーちゃん眠たいのか?パパとママは2階に寝に行くよ〜」とすずにおやすみを告げ、眠りにつきました。

 11月15日、日曜日の朝、妻は仕事で8時頃に家を出て行きました。ボクはというと朝苦手人間なので、まだ布団にくるまっていました。

 10時頃に目が覚めて、下の階へ行くと駆け寄ってくるあおとこはる。しかし、すずの姿はありませんでした。すずを探すと2階にあるホットカーペットの上に座っていました。「ご飯準備したからね〜」と声をかけて撫でるとゴロゴロと喉を鳴らしました。「いつも鳴らさないのにな」と思いつつも、すずをあとにして、ボクは家事を始めました。

 1時間経つも、すずがご飯を食べに来ることが無かったため、再び2階へ様子を見に行きました。すずの状態は1時間前と変わっていませんでした。やっぱり様子がおかしいと思い、「ごめんね!」と言って、すずを抱っこしてご飯の前に連れていってみました。しかし、ご飯を食べることは無く、水を少し飲み、ゆっくりとした足取りで柔らかいマットの上へ移動して横になりました。

 明らかにいつもと違う状態でした。ぐったりとした猫を見たことが無かったボクは独りでものすごく不安な気持ちになりました。病院へ連れて行こうにも、近くの病院は日曜が休み、かかりつけの病院も休み、そして開いている病院を見つけたとしても、妻が車で仕事へ行っているので病院へ行く足もありませんでした。

 目の前でぐったりしている猫を目の前に「猫 ぐったりして動かない」「猫 ご飯食べない」等とインターネットで調べて状況を整理しようとしました。丁度、妻が休憩時間になる頃だったので、状況説明のLINEを写真付きで送りました。

 妻からすぐに電話があり、とにかく病院へ連れていくしか無いという話になり、開いている病院を見つけたため、ボクは電車で妻の職場まで車を取りに行くことにしました。

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