すずまろ物語

①出会い

プロローグ

 

 2020年4月、世界は新型コロナウィルスの影響により、パンデミックが起きていました。のんびりした日本も、誰もが知る有名人の訃報をキッカケにただ事でない事が起こっているとようやく認識し始め、緊急事態宣言が発令された頃でした。

 ボクは結婚を機に新居へ引っ越しをしたところでした。勤務している会社まで片道2時間の「毎日小旅行かよ」という新生活がスタートしようとしていましたが、緊急事態宣言のおかげ(と言ってはなんですが)で、小旅行生活は始まらず在宅ワークをしていました。

 在宅ワークと言っても暇だということは無く、仕事はしっかりとコロナの影響を受け、多忙を極めていました。精神的に苦痛でしたが、何とか4月を乗り切り、ゴールデンウィークにたどり着いたのでした。

 ゴールデンウィークは本来であれば気候も暑すぎず、雨も少ないので大好きな連休です。何と言っても憎きスギ花粉症シーズンが終わりを迎えることが何よりもの理由です。毎年、妻と旅行や美味しいご飯を食べに行き、お互いの労をねぎらっていました。しかし、2020年のゴールデンウィークはコロナの感染拡大を防ぐべく、自宅待機を余儀なくされたため、大変退屈なものになるなあと休み初日から気分を落としていました。

 

 5月1日、ボクは連休2日目、妻はあいにく出勤日でした。我が家は車を1台所有しており、主に妻が通勤用で使っています。しかし、この日は車を使いたいと思ったので、妻を送り迎えすることを申し入れました。「連休羨ましいな〜」と駄々をこねる妻を助手席に乗せ、職場まで運転をしていた時にある1匹の子猫と出会う事となったのでした。

出会い

 車を転がして、自宅から10分くらい走った頃です。路肩にカラスが1羽、茶色で小さい生き物をクチバシで突いている光景が見えました。ボクは運転しながら「ちょっとしんどい光景が見えたわ。カラスが、モグラをかな、、茶色の小さい生き物をイジめてた。もしかしたら、子猫かもしれん。助ける?」と口に出すと、妻が「嘘やん、、どうしよか。。。ん〜、、助けよか。。。」と返答したのでした。

 妻は動物が好きで、中でも猫が大好きです。我が家には2匹の猫が家族にいます。「あお」という名前のロシアンブルーの男の子と「こはる」というアメリカンショートヘアの女の子です。ボクは元々動物が苦手でした。しかし、ボクの意見そっちのけで妻が無理矢理に家族に迎え入れた2匹の猫にボクはまんまと懐柔され、晴れて猫大好き夫婦となったのでした。

 そんな妻だから、ボクの問いかけに対し、仕事に向かっている途中でしたが、助ける決断をしました。車をUターンさせ、事が起きていた場所の近くまで戻り、車から降りて小動物がイジめられいる所へ駆けつけました。カラスは外敵が来たと飛び去りました。そこには、目も開ききっていない、生まれて間もないであろう子猫が血を流してぐったり横たわっていました。息はしているので、まだ助けられるかもしれないと思い、抱きかかえて急いで車に戻りました。子猫の体に力は無く、優しく丁寧に扱わければ、壊れてしまいそうな程でした。カラスは草むらから顔だけ出して、ずっと我々を見ていました。

動物病院へ

 一旦、車で自宅に戻りました。妻は職場に休む報告をしており、ボクはスマートフォンで開業している近くの動物病院を探しました。

 

 ゴールデンウィーク中ということもあり、休診ばかりでした。開業していても午前診が終わった休憩の時間帯であったため、なかなか直ぐに診てもらえそうな動物病院を見つけることができませんでした。妻は職場への電話を終え、ボックスに柔らかいタオルを敷き、子猫をソッと寝かしていました。弱々しく息をしており、呼吸のたびに鼻のあたりが膨らんだり萎んだりを繰り返していました。顔の骨を骨折しているようでした。ボクはその様子を見て、早く診てもらえる動物病院を見つけなければと思い、ダメ元でも複数の動物病院に電話をかけ続けました。ようやく一軒取り次いでくれた動物病院があり、状況と名前を伝え、再び車に乗ってその病院まで車を飛ばしました。

 助手席では妻が「頑張ろうね。もうすぐ先生に診てもらえるからね。」と優しく子猫に声をかけていました。そうしているうちに動物病院に着き、事前に連絡していた者と伝えると、最優先で診察室に通してもらえたのでした。

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