すずまろ物語

⑲すずの命

すずの命

 妻が泣いていた11月26日の木曜日、すずの今後について話合いもしました。

 もしもFIPだった場合、日本国内には治せる薬や治療方法はありません。国外に目を向ければ、FIP界隈で話題になっている治ると言われている薬はありました。しかし、日本では「未承認動物医薬品」という扱いで販売・譲渡・広告が禁じられている薬でした。ネットで個人的に購入することは可能でしたが、100万円を超えてくるものでした。しかも治らない可能性もあるというのです。

 

 その薬はさらに投薬期間が約90日間と非常に長いものでした。ここ数日のすずの様子を見ていると、とてもではありませんが継続的な投薬は厳しいものがありました。

 体調を崩してから入院するまでの間、嫌がるすずの口に半ば強引に薬を入れてきました。生後半年の小さなすずには大変辛い毎日だったと思います。

 もう十分、十分過ぎるほど頑張ってくれた。もうすずが嫌がることはしない、すずに負担やストレスがかからないようにしようと話しました。

 色々と話し合った結果、FIPだった場合は残された時間を出来る限り穏やかに過ごしてもらおう。生まれて間もない時からすずはよく頑張った。もうゆっくりさせてあげようと決断しました。

 非常に辛い決断でした。

 舵取りをするのはボク達飼い主です。すずの命なのに。

 猫と生活をし始めた2年前から、いつかはこのような決断をする日がくると覚悟はしていました。

 しかし、こんなに早く決断を迫られる時が来るとは思っておりませんでした。ボクの心は「この決断で本当に良いのだろうか。すずのためだろうか。自分のためでは無いのか?」等と、大変揺らぎました。

 「覚悟している」と言うこと、思うことは簡単にできますが、実際その場面に直面するとフラフラと動揺してしまい、全然覚悟なんて無いじゃないかと痛感しました。しかし、時間を戻せるわけは無く、止まることも無いため、下した決断に責任を持って進んでいくしかないのです。

 

お迎え

 妻は言いました。

 「入院していても薬を飲めているわけじゃないし、これからの方針も決めたから、すず迎えに行かへん?」

 ボクはすぐに同意しました。

 妻の友人が送ってくれる入院中のすずの写真を見ると、どれも何だか寂しそうな表情をしていたからです。もちろん、動物病院が悪いわけではありません。猫は住み慣れた環境を好みます。家に帰ってこれば、少しは表情が和らぐかなあと思いました。

 11月27日の金曜日、妻が午後出勤の日だったため、動物病院に連絡を入れて午前中にすずを迎えに行ってくれました。

 すずの状態としては、変わらずトリコモナスが多く便に含まれており、FIPかどうかの結果は未だ出ていないというものでした。

 獣医さんからは「まだFIPと確定してはいないから、諦めずに頑張りましょう。すずちゃんは嫌がりますが、出来るだけトリコモナス下しの薬は飲ませてあげて下さい。FIPかどうかの結果は出次第、すぐに連絡します。」とお声がけを頂きました。

 

 妻は連れて帰ってきたすずを一旦猫ベッドに寝かし、普段2階の寝室で寝ているボク達が1階で寝られるように、リビングの炬燵を片付けてお客さん用の布団を敷きました。

 そして、トリコモナスがいるということだったのでリビングの扉は閉め切り、あおとこはるが接触しないようにしました。

 妻はすずにオシメを履かせ、すずの近くにご飯と水を置いて、仕事へと向かいました。

土日はずっと一緒にすずと過ごそう

 すずが帰ってきた日、ボクは仕事を早めに切り上げて、妻の職場の最寄り駅へ帰りました。仕事終わりの妻と合流し、車で家へと帰りました。

 

 帰り道、車を運転をしながら、妻に昼間のすずの様子を逐一報告してくれたこと、1階で寝られるように準備してくれたことの感謝を伝えました。

 

 FIPの検査結果が出ておらず、獣医さんも諦めないでとおっしゃっていた事を妻から聞き、「すずって拾った時から奇跡見せてくれたやん?俺、今回もFIP陰性でした!って結果あるかもって、もう一回奇跡見せてくれるんちゃうかな!?って少し思ってるねん。すずって、そういう、上手くいえないけど、奇跡起こしそうな雰囲気持ってるやん!?カラスに襲われてるところ、たまたま通りがかった俺らが助けて、死んでしまってもおかしくない状況から元気に復活して、大きくなれへんって言われてのに体重も増えていったし!なんか簡単に死んじゃうタマじゃ無いと思うねん。」と妻に話しかけました。妻も「私も少しそんな気がしてる。」と穏やかに返事をしてくれました。

 希望を持ちたい、淡い期待を抱きたいような会話をしながら車を走らせ、時刻は21時に差し掛かろうとしていました。動物病院の診療時間は20時までなので、検査結果は明日かなぁ等と会話していると、妻の電話が鳴りました。

 

 電話の画面には動物病院で勤める友人の名前が表示されていました。「検査結果出たんかな?」と戸惑いながら、妻は電話に出ました。

 ボクは運転しながら。妻が話しているのを聞きました。妻の携帯からかすかに聞こえる声を聞いていると、どうやら友人から獣医さんに電話を変わったようでした。検査結果出たかぁと思い、心拍数が上がりました。

 妻は相槌を打ちながら話を聞き、最後に「診療時間過ぎているのに、連絡下さいましてありがとうございます。」と伝え、電話を切りました。そして、妻は言いました。

 「すず、FIP陽性だったって。」

 「そうか。陽性。そか、厳しいな。上手くいかんもんやな。。」と訥々とボクは返事をしました。

 「結果が出てしまったものは仕方ない。土日は二人共休みやし、1階で過ごせるようにもしたから、外出せんと家ですずと過ごそう。」妻は言いました。

 「せやな。土日はずっと一緒にすずと過ごそう。」とボクは応え、車は家に着きました。

あと何日間、すずと一緒に過ごせるのかな。

そんな事を思いながら、玄関の扉をあけて三兄妹に向かって「ただいまー!」と声を発したのでした。

POSTED COMMENT

  1. ぐーぐー より:

    すずちゃんのお話読ませていただいてます。すずちゃん大変でしたね。飼い主さん含めよく頑張ったと思います。お忙しいと思いますが、すずまろ物語の更新待ってます!

    • shin2021start より:

      ぐーぐーさん、コメント頂きましてありがとうございます!すずはよく頑張ってくれました!私も更新を、、、頑張らねば。。。笑

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